先日の記事にたくさんのコメントをありがとうございます。
こちらの記事でお返事に代えさせていただきますね。
私は昔はファストファッションの服を買っていたこともありました。
でも生地屋を始めて、徐々に買わなくなってきました。
自分で型紙を起こすようになって
サンプル縫製を山のようにするから、
わざわざ買わなくても着るものが山のように出現するようになったから。
というのもありますが、
明確に「もう買わないようにしよう」と思ったことがありました。
入院手術をしないといけない、という局面が私には数回ありました。
その、一番最近の手術の時でした。
その時はもうすでにほとんどファストファッションの服を買わなくなっていたのですが、
入院時の洗い替えがどうしても足りなくて買い足さないといけなかったんです。
仕事が忙しく、なかなか買いに行く暇がなく、
何かの隙間時間みたいな時に車でさっと乗り付けて、
ささっと必要アイテムと必要枚数を買って出てきました。
綿エステルのTシャツワンピースが980円とか
スーピマシルケット天竺のUネックTシャツが580円とか
一週間分の洗い替えをまとめて買っても1万円行くか行かないかでした。
入院中はそれをありがたく使用し、
退院後もそのまま持って、普通に普段着に着ていました。
特に、スーピマシルケット天竺のTシャツが580円だったのには驚いていました。
生地が、60/2だったんです。
普通に60/2スーピマシルケット天竺を作ったら原価だけで1000円は超えます。
テキスタイルメーカーの出し値で、です。
そんな良い生地を使った製品がたったの580円で販売されているなんて。
そりゃあ国内のアパレルは衰退するし、
国内の生地も売れなくなるわなあ。。。と
恐ろしく思いながらも
そんなに品質の良い物をとても安く買えた事を喜んでいました。
生地は良いし、Tシャツそのものには罪はないから、と思い
そのまま大事に着ていました。
そんなある日の料理中。
お気に入りのスーピマTシャツにミートソースが飛んで付きました。
「あっ!ミートソースって落ちにくいんだよな〜」と焦りました。
豚バラ肉の脂に溶けたトマトの色素ってすっごく頑固なんです。
「いやだな〜面倒臭いな〜」と気分が落ち込みました。
でも次の瞬間
「まあでも安かったし、良いか。必要だったらまた買えば良いしいつでも買えるし。」
と思いました。
そのときハッとしました。
それがとても上質で良いものだと認識しているのに、
私はその「良いもの」を粗末に扱おうとしている。
「安かったから良いや。」
そのものの良さを十分理解している人間にさえ、そういう気持ちを起こさせる。
本来だったら
「こんなに良いものなんだから、大事にしよう。丁寧に染抜きしていつまでも大事に着よう。」
と思って当然なのに。
安い価格で大量に生産されていつでも買える。
その状況って、ものの価値を下げちゃうんだな。
そう感じました。少なくとも私にとっては。
ものを軽んじる。
その意識って、お金を軽んじるのと一緒のような気がしました。
なんか嫌だな、と思いました。
エコにも反するし。
そのときに、
「お買い得だと感じても、ファストファッションの服は買わないようにしよう。」と自分で決めました。
その頃から、徐々にですが
物を買う時には
「この商品は自分にとっての価値観と価格が一致しているか?」を判断基準にして買うかやめるか決める様になって来ました。
それから半年後ぐらいから、アパレルOEMを担当する様になりました。
で、その先の仕組みを色々知る様になりました。
実際にアパレルの現場に立って見て驚いたのが、
各ブランドが「安くしないと売れない」という固定観念というか呪縛に囚われてしまっていることでした。
ファストファッションの影響を完全に受けています。
「安いけど高そうに見える生地はどれですか」
「○○のブランドではどの素材がヒットしてますか?」
「シルケットのリンクスを750円で作って下さい」(無理です赤字になります)
などなどなど
しまいには「売れる生地を作って下さい」(は?それを考えるのはあなた達デザイナーの仕事でしょ)
おっといけねえ、本音が漏れでてしまう。。。
こんなんじゃあ良い製品が出来上がって来るはずがありません。
みんなが売れた実績のあるアイテムばかりを追いかけるので
どこのお店もなんとなくどこかで見た事ある様なアイテムばかりが並ぶはずです。
どのお店も同じ感じだったら、安い方を選びますよね。消費者は。
そうするとアパレルブランドは「もっと安く、まだ安く」となる。
負のスパイラルにはまってしまいます。
会社は経営状態が悪化するので、デザイナーに「売れるものを作れ」とプレッシャーをかける。
デザイナーはそのプレッシャーに萎縮してしまって、自由な発想ができない。
デザイナーってクリエイティブな仕事のはずなのに、
安全牌を探し回って無難をこなす中間管理職みたいになっちゃってる人が多いです。
柄や色合いを決めるのでも、自分の判断に自信が持てないからか、社外の人に意見を求めたり。
そんな様子を目の当たりにしていると、彼らがクリエイターではなく、ちょっとオシャレなだけの一会社員に見えます。
私が今OEMでお手伝いさせて貰っているのは主にメンズブランドなのですが、
中には自分のアイデアで素敵な物を編みだしているブランドさんもあります。
でも私は女なので、メンズブランドの服はサイズが合わなくて着れません。
レディースブランドで良いと思うブランドを探し回るよりも欲しいアイテムを自分で作っちゃった方が早いので、
正直言ってレディースブランドの事はあまり知りません。
なんか、オチがないままだらだらと書いてしまいました。
私が見たものは、偏っているかもしれません。
もっとキラキラ輝いて物作りしているブランドさんも、あるかと思います。
でも、ほとんど出会えていません。
日本中がファッションに興味を持てなくなっている、とも言われていますね。
この先、どうなっていくのかな。
そして自分はどうやって生き残っていこう。
ヘビーでシビアですが、考えずにはいられません。